小谷野敦『もてない男』

人から聞いた話だが私は、いつも早く二次元美少女になりたいと言っているらしい。確かに、自分の中では一刻も早く二次元美少女になって、主人公と楽しい学園生活を送りたいと思っている。しかし、それを公言しているとは思わなかった。

エロゲの主人公というのはもてない。彼女いない歴=年齢だったりする。

ああ、早く彼女が欲しいな、といつもつぶやいているわりに何もしない。

何もしないが、いつの間にか女の子が5人くらい言い寄ってきて、うわっ、今朝のパンツ窃盗犯!とか何とか濡れ衣を着せられているうちに、女の子がウェディングドレスを着ていてハッピーエンド的な音楽が流れつつスタッフロールが流れて、ついでに私の目からも涙が流れていたりする。

あれっ?と思う。おかしいな?と思いながら、「続きからプレーする」的なボタンをクリックして、今度は気づいたら、別の女の子の裸を覗いた罪で女の子がウェディングドレス姿で笑い泣きしながら、また同じ音楽が流れて、スタッフロールが流れて、私の目からも涙が流れて、ごみ箱からティッシュが雪崩れてみたいな状況になっている。

明らかにおかしい。もてないはずだった主人公が何故かこの時点で2回も婚姻しているのだ。時空に歪みが生じている。

これは、ゲームの話だが、現実でもおそらく同じことが起こっている。

もてない男』なんて本を書いた小谷野さんはそのことをご存じ無いのだ。いや、無かったという過去形かもしれない。

小谷野さんが作中で何度も名前を挙げている宮台センセイや上野千鶴子はおそらくエロゲの主人公やヒロインなのだろう。

それがたまたま三次元世界に一時的に具現化しているだけに過ぎない。

あちらの世界での断片的な記憶を頼りに適当なことを言っている。

宮台センセイが泣かせたヒロインの数はエロゲ100本分くらい、上野千鶴子が泣かせた主人公の数はエロゲ500本ぐらいだろう。

だから、硬派で人の道を踏み外したことの無い小谷野さんには分からないのだ。

この世でモテることに果たしてどれほどの意味があるというのだろうか?

この世でモテることなんて何の意味もないという小説を書いた作家は結果的にこの世でもてるようになり、神経を病み、早死にした。

モテるなんて意味がないなんて書きつつ本当はモテたくて仕方なかったのだ。

その結果、自分の言葉が喉に絡まって窒息死した。

 

もてない男―恋愛論を超えて (ちくま新書)

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