感情に名前を付けない~Syrup16g delaidback~

私は昔から自分の(大切な)感情に名前を付けないようにしています。
名前を付けることに意味をあまり感じないというか、必要の無いことだと思っています。
何故かというと、言葉は独り歩きするからです。
普通、ある状況がある感情を想起させることで、人は何かを感じます。
その際に、その想起された感情に名前を付けます。
すると、その逆のパターン、付けられた感情名から状況を想起できるようにもなります。
人間に備わった便利な機能です。
しかしながら、よく考えると、ある状況に対して、ある一つの感情のみが想起されるものでしょうか?
または、ある状況に対してラベリングされる感情名は、他の場面でも想起されるものではないでしょうか?

分かりやすく書くと、
ある状況に対して、ある一つの感情のみが想起されるものか?という問いに対しては、
ある状況=S、
ある感情1=e1、
ある感情2=e2、
ある状況からある感情を想起させるためのメカニズムである何らかの変換係数=xと置くと、

e1=Sx…①
だけではなく、
e1+e2=Sx…②や
e1×e2=Sx…③
e1=Slog(x)…④
など無限に状況を想定できます。

または、状況S1、状況S2と置いて、
e1=S1x,…⑤
e1=S2x…⑥
となるけれども、S1とS2は違うので、変換係数xの値が異なるという状況も発生するということです。

ここで感情e1やe2をラベリングするための感情名がEしか存在しないとします。
すると上記の式は、
E=Sx…①'
E+E=Sx…②'
E×E=Sx…③'
E=Slog(x)…④'
E=S1x,…⑤'
E=S2x…⑥'
となり、①'と②'と③'はおなじE(感情名)で表すことになります。
式の左辺自体は、EとE+EとE×Eですが、これを言葉で表すとなると、どうすればいいのでしょうか?
E=悲しい、E+E=とても悲しい、E×E=今世紀最大の不幸に対する形容しがたいこの感情
とかになるのでしょうか?
また、⑤'と⑥'はそれぞれ別の状況が同じ感情名を指示しています。
悲しい=10年間付き合った彼女と別れて
悲しい=3日間付き合った彼女と別れて
同じ悲しいでも状況の深刻さが違います。

ここからはまた抽象的な話になるのですが、人間は意外とこの感情名というものだけを後々まで覚えているもののようです。
すると、
そういえば、彼女と別れて悲しかったなあ。あの彼女はどんな人だったか?
ああ、思い出せないな。別れる最後の三日間ぐらいはとても覚えているのだけど、それ以前の記憶がない。
でも確か、10年くらい付き合っていた気がする。
と、実際には3日間しか付き合っていなかった彼女に付属する状況がどんどん書き換えられていきます。
これは極端な例ですが、もう少し軽微な記憶の間違いはあるのではないでしょうか?

話が長くなりましたが、このような理由から私は自分の感情には名前を付けないのです。
一つの感情の名前の裏には膨大な量の状況と生の感情あるものですから。
それを理解できないあまり関わりたくない他人にはわざと偽物の感情名を提示する場合はありますね。
その感情名に転がされてけよ もう一生とでも思っているのかもしれません。

閑話休題
Syrup16gの今回のアルバムは、過去にライブなどでは披露したもののCD音源の形になっていないものを集めたもののようです。
歌詞をぼーっと聞いていると、赤いカラスという曲では、
私怨、恥ずかしい、苛立ち
という文字が頭に入ってきます。
その一方、開けられずじまいの心の窓からとう曲については、「伝え過ぎてる感情は殺して」
という歌詞もありますね。
これまで、赤いカラスという曲ほど、感情を表す語が歌詞に入った曲がSyrup16gにはあったでしょうか?
「それをどうして悲しいという
信じたくないけれど本当です
君の心の価値は薄い
それをどうして悲しいというの?」
という感情を拒否する歌詞はありましたが。