衝撃とはなんぞや~島崎藤村 初恋~

B型H系を見て受けた衝撃(一体何が衝撃だったのかよく分からず…)からまだ立ち直れないのですが、何となくそれとらしい理由を考えて記してみますに、現実と理想を綺麗に切り離している人間にとって、山田さんはその切断面を糊でガシガシくっつけたようなキャラクター性を持ち合わせており、とても辛いものを見てしまったような気がいたしております。二次元少女でも大抵は綺麗に現実寄りと理想寄りとに綺麗に分かれ、私も割り切ってそれぞれを楽しめるのですが、山田さんはなんだかよく分からない感じなのです。昨日の晩から、妻を寝取られた人間失格の主人公の気持ちが痛いほどよく分かる気がしております。

個人的に男性の三歩後ろをついて行くようなキャラクターが好きなのですが、最近ではそれがヤンデレ化の兆候だったりするわけで、何事も極端なのはいけないと思う次第です。あ、でもヤンデレも好きです。


さて、そのような経緯がありまして私の心の寒さを埋めるべく、島崎藤村の「初恋」をもう一度読んでみようと検索をしてみました。そうしたら、詩の最後の部分に二通りの解釈があることを知りました。


林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ


この部分です。私はこの部分は


「林檎畑の木のところに自然と出来た細い道は、誰が踏み固めて出来た道なんでしょう?と問う天然ボケ(自分たちが逢瀬を重ねたから出来たのに、それが良く分かっていない)な(もしくは「道」というものに対して哲学的な問いを発する)あなたが恋しい」


というような解釈で習いました。しかし、


「林檎畑の木のところに自然と出来た細い道は、誰が踏み固めて出来た道なんでしょう?と分かりきっている(自分たちが逢瀬を重ねた場所が林檎畑だから)のにわざわざそんなことを言う小悪魔なあなたが恋しい」


という解釈もあるらしいです。しかしこれでは、「初恋」ではなく「爛れた恋」です。

川端康成が好きな私はこの解釈に耳を傾けることはしません。というより、何でそんな色々な解釈が出てくるものなのかだとかどの解釈に優位性があるのかだとかという根の深い問題がありますが、そんなことを考え始めるとやれ自然主義だの写実主義だの文学とはどうのこうのみたいな専門外のことがどっと押し寄せてくるので、ここは単に「初恋」という詩が何の背景も持たず、突然現れたものとし、B型H系を見た衝撃から立ち直れない私にとって都合の良い解釈をします。


まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり


(大人の仲間入りをしたばかりの少女。花櫛が似合っていて可愛い)


やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり

(白い手ということは水仕事などで荒れていない良い家のお嬢さん

お嬢さんに林檎をいただき、その林檎を見つつ妄想する私

お嬢さんを見つめる勇気は無い)


わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな

(別に実際にアルコールを摂取したわけでは無い。

妄想に酔っている。

酔っているので自分の吐息でお嬢さんの髪の毛が揺れるという妄想をする。)

(以上のような状況を踏まえ)


林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ

(「あの林檎畑の木のところに自然と出来た細い道は、誰が踏み固めて出来たものなのかしら。」

お嬢さんがぽつりと言った言葉を布団の中で反芻する私。

ああいった小さい道というものははじめから道としてこの世に存在しているものだと子供の頃は思っていたけれど、違うのよね。当然、大通りは人がどこかから土を運んできて出来るものだって知っていたわ。けれど、あんな小さい道というのは意図的に作るものでは無いわよね。誰かが踏み固めるから自然と出来てくるの。私はあんな小さい道でも誰かが作ったものなんだって考えると、それを最初に作った人を思って夜も眠れなくなるの。

ああ、あの時の問いはそういう哲学的意味を持っていたのか、ますます恋しい…と思う私。

実はね、あの道を作ったのは私なんですよ。あなたから林檎を貰って以来、林檎がやたらと気になっていつもあの林檎畑の木の下で本を読んでいました。)

「初恋」という題名なのだから、このような奥手の恋なんじゃないでしょうかと思うわけです。「初恋」なんてお嬢さんの真意までは分からないものです。私も「本を読んでいました」などと白々しく言っていますが、実際、お嬢さんが来るのを今か今かと待ち構えており、本の内容など頭に入っていないでしょう。私が林檎畑から家に戻る途中、偶然お嬢さんに会い、お嬢さんは

「あら?最近までこんなところに道なんて無かったのに不思議ね。林檎泥棒かしら?後で父上に報告しておきましょう」

ぐらいの気持ちで、私にそんなことを尋ねたのかもしれません。

正直、これを書いてみて自分の妄想が一番厄介だということにようやく気付きました。

山田さん、ごめんよ。3,4話も見るよ。