「狂い」の構造 人はいかにして狂っていくのか?

「いき」の構造をパロった題名なのでしょうか。洒落ています。

「面倒くさい」が「狂い」のはじまりだなんて、どきっとするじゃないですか。
「面倒くさい」なんて私の行動原理の基本ですけども。

夏休みの宿題をやらなくて先生に怒られるのは「面倒くさい」
校則を破って先生に怒られるのは「面倒くさい」
就職せずにだらだら無職でいると周りからの視線が「面倒くさい」
結婚せずに仕事に取り組んでいると周りからの圧力が「面倒くさい」
平均寿命以上生きてると、早く死なないかななんて周りからうっとおしがられて「面倒くさい」

そうです。きっと、私はずっと狂い続けていくのです。
という感じの話ではなかったですが、根本的に何も変わらないと思うんですよね。
作中では、ヘルメット入れに赤子を入れっぱなしにしてパチンコをしていたせいで殺しちゃった親の話とか、レンタルビデオを返却するのがめんどくさくて滞納料が16万になった話とかを例に出しています。
そして、本当はダメと分かっているのだけど「面倒くさい」という気持ちが先に立つので、自分をごまかしている状態というのが狂気を発動させる火種になるというような説明をしています。

そうなると、上記の私の例でも、本当は宿題する意味がわからないけど、先生に怒られるのも面倒だし、と自分の気持をごまかしているのも構造的には同じではないかと思うんですよね。

つまり、普通のサラリーマンをしてて、温かい家庭を持っていて、高級犬を飼ってて、ローンを毎月きちんと支払っていたとしても、それらの行動が「面倒くさい」という気持ちの結果なされた行動であれば、いつでも、それらの生活は終焉を迎え、狂気へと転がり落ちていくのです。

といいますか、一つ思ったんですけど、ヘルメット入れに赤子のような例は、「面倒くさい」というよりも、「金が無い」ことによる「思考停止」文化の人達の行動なんじゃないんですかね。
この辺が参考になるような気がするんですが、

底辺から這い上がって語る貧乏 都会とカップラーメン

「お金に余裕が無いと目先のことばかり気になって、視野も狭く」なる状態が、何世代も続くと、何を是とすべきかなんて倫理観もすっかり、それ専用に鍛え上げられてしまい、目先の利益を優先する独自の文化が生まれるんじゃないでしょうか。
つまり、本なんて書いちゃって、出版できるような立場の人達とは違う倫理観で生きてる人達なんですよ。おそらく、彼らは彼らなりのルール(合理性?)が頭の中にあるんです。
もう少し、視野を広く持って、自分達が産んだ子供を育てるべく、まっとうに金を稼ぐというのが、本なんて書いちゃう人達の倫理観だと思いますが、私のような超絶広い視野の人間からすると、人間は自分達以外の動物を檻に入れて鑑賞したりする邪悪な生き物なので、滅亡すべき、これ以上繁殖しようなんて狂ってる!!ってことになっちゃうのです。

Q. その超絶広い視野とやらは、「面倒くさい」という気持ちがもたらした狂気じゃないのかね?
A. そうですね、すみません。

そんな屁理屈はいいとして、内容としては無いようって感じで、カイシャの飲み会で隅のほうで、使えないオッサン二人に呼び出されて延々聞かされる与太話って感じでした。
世の中そんな興味深い事例もあるのね、でも、その理屈間違ってるから!ざんねん!
なんて言わずに、黙って焼酎ロックを飲む私でした。
最後の章で語られた伝説的な殺人鬼の話が一番面白かったです。
自分がどういうふうに見られてるかという他者の目線を持ってるレクター博士は、殺人鬼の中でも特殊という説明は、興味深かったので、しばらくレクター博士について調べる日々になりそうです。

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目次

第一章 「面倒くさい」が「狂い」のはじまり
怠惰は人を殺す
交通事故現場は狂気の溜まり場
ミートホープ事件、そして東海村臨界事故
人工中絶、赤ちゃんポスト、自殺
シャッター街の狂気

第二章 バルンガ病の人々
給食費を滞納する王様たち
「黙って俺の言う通りにしろ!」
狂気は治るのか?
放火という不治の病
言葉が狂気を呼び寄せる
因縁張り
「やっぱし」ですべてを説明する男
小説家・平山夢明について
再び、狂気は治るのか?

第三章 ”雑”な狂人たち
山口光市母子殺人事件とドラえもん
膝がカクッと抜ける!
弁護士という人々
精神科医の心のケアと境界例の恐怖
ダメな男とダメな女のカップル
松田聖子の生え際
部屋が汚いヤツは狂人か?
人類は動物化している!?
レクター博士はあり得ない狂人か?

第四章 ”ハイ”になってしまった人々
有吉佐和子が『笑っていいとも!』をジャック
なぜ盗作するのか?
選挙に出る=躁病?
「もったいない」は人を狂わす
風船おじさん伝説
ダーウィン
頭がおかしい人は服を脱ぐ?
甲羅を脱ぐ?
自殺について、再び
一番いい自殺の方法とは?
よくわからない奇妙な癖
隠れる人々

第五章 殺す狂人たち
人を殺す瞬間
人を食べるということ―ゲイン、ダーマー
狂人をコントロールすることはできるか?
殺人鬼の部屋
嗅覚と殺人
文学としての食人
伝説的ストーカー事件
アメリカの刑務所と巨漢殺人者
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参考
「狂い」の構造 (扶桑社新書)/扶桑社
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「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫)/岩波書店
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