佐藤究 QJKJQ
久しぶりにミステリーを読みました。
むしろ、小説そのものを読むのも久しぶりなのかもしれません。
虚構と現実の境目を扱った作品は昔から好きです。
主人公の目を通して語られる世界が果たしてどれだけ、他人と共通した認識を得られる何かなのか?という問題は我々に常に付きまとう問題ではないかと思います。
その認識の過誤を丁寧に扱いつつ、殺人という究極の行為と絡めて物語は進んでいきます。
題名の意味も読み進めていくうちに明らかになります。
私がこの小説を読み始めたときにまず感じたのは、主人公の目を通して語られる現実に対する違和感でした。何かがおかしい気がする?
その違和感を払拭するために、読み進めていくと、物語冒頭でちりばめられた様々な伏線が一つにまとまっていく爽快感を味わうことができました。
本当に美しいくらいにすべてのパーツが嵌っていき、大きな絵を描いていくような感じです。そして、その絵の全貌が見えたとき、主人公には選択肢が与えられます。
その選択肢を選ぶか、と思いきや、主人公は自ら選択肢を作ってそれを選びます。
猟奇的なテーマを扱いつつも、人道的なメッセージを得られる爽快感と達成感のある小説でした。